附属病院診療科
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病理診断業務は検査部の一部門と位置付けられていたが、平成15年4月に附属病院病理部が設置され、岡部英俊教授 (臨床検査医学講座教授・検査部長)が病理部長に、九嶋亮治が済生会滋賀県病院病理科より臨床検査医学講座助教授(病理部副部長)に異動してきた。その頃の病理診断業務は、外科切除症例の場合、外科系医師が切り出しを行い、ぶつ切りされた検体が病理検査室に提出されるような状態であり、ホルマリン固定方法やホルマリンの管理に始まる病理診断業務の基本事項に問題点が多かった。平成21年に九嶋は辞職した。
平成26年4月に九嶋が国立がん研究センター中央病院病理・臨床検査科より帰学し、同年6月には、病理診断科を設置し科長に併任した。上記のような現状を打破し、国立大学病院として標準的な病理診断業務が施行できるよう、ホルマリン固定方法の見直しから診療各科に指導し、切除検体の切り出しを病理医主導で行い、臨床情報・画像、肉眼像と組織像がマッチするような診断が報告できるように改善を進めた。平成31年には病院幹部の理解を得られ、ホルマリン対策を完備した切り出し室が完成し、その後令和3年には病理部でISO15189を取得することができた。
病理医は全国的・絶対的に不足し、滋賀県下においても、当部から滋賀県下に常勤病理医を派遣した実績はゼロであった。それまで連携が不十分であった基礎の病理学講座と連携し、病理専門医を育成することを当科における最も重要な課題とした。そのためには、ヒトが逃げるのではなく、ヒトを集めることのできる指導医を採用しなければならない。平成27年6月に森谷鈴子が名古屋医療センターより病理部准教授(副部長)に就任した。続けて、平成29年7月より松原亜季子を防衛医科大学校より採用した(現:検査部学内講師)。
平成27年4月に病理診断科初の専攻医である苗村智が入局し、それを皮切りに、これまで13名が、色々な大学(香川大学、高知大学、神戸大学、福井大学、関西医大、滋賀医大)から専攻医として入局し当科で研修後、学内外で活躍中である。さらに岡山大学から2名の病理医を採用することができた。
教育面では、系統講義において基礎の病態発生学の講義の一部を担当し、検査部・病理部・輸血細胞治療部と合同で行っている臨床実習では、術中迅速診断をスチューデント・ドクターとして学生に手術室に報告してもらったり、切り出し作業の一部を体験してもらったりしている。九嶋は令和2年より病理学講座(人体病理学部門)教授と併任するようになり、病理診断科の専攻医出身の病理専門医2名(田中えり、日野倫子)が病理学講座の大学院生として基礎研究を行っている。
病理専門医と細胞診専門医は我々にとって必須の資格であり受験者全員が合格しているが、今年度までに2名(森谷准教授、能島舞:現病理学講座助教)が新たに設けられた分子病理専門医試験にも合格し、がんゲノム検査にも注力していきたい。また、古典的であるが最も重要な従来型の病理診断業務のデジタル化も進めているところである。
SHIGA UNIVERSITY OF MEDICAL SCIENCE 50th Anniversary