Departments講座等紹介

基礎医学講座

生化学・分子生物学講座(分子病態生化学)

当研究室の前身は生化学第二講座(昭和54年4月開講)で、その後、平成17年の基礎医学系講座再編により、現在の生化学・分子生物学講座 分子病態生化学部門に名称が変更された。開講以来、初代 上田潔(昭和54年〜平成2年)、第2代 大久保岩男(平成2〜22年)、第3代 扇田久和(平成23年〜現在)の各教授により研究室が引き継がれている。本学開学40周年までの当研究室の経緯については、これまでの周年記念誌に記載されているので、最近10年間のことを中心に述べる。

研究室のトピックスとしては、令和4年5月、扇田久和が例会長として日本生化学会近畿支部例会を本学で開催したことである。まだコロナ禍の最中であったため、支部例会初のハイブリッド形式の学会となった。ハイブリッド学会には、現地での直接のコミュニケーションと、遠方でもWebで気軽に参加できること両方のメリットがあるが、準備が大変であった。例会の運営では学内の多くの研究室からのご協力も頂き無事終えることができた。

研究面では、ジペプチジルペプチダーゼ3(DPP3)の解析、Rhoファミリー低分子量Gタンパク質の解析、遺伝子改変カニクイザルの開発などを中心に、病態としては主に心血管系疾患、がんに焦点を当てて研究を行っている。DPP3は糖尿病のターゲットとなっているDPP4と同様に、ポリペプチドのN末端2残基を切断するペプチダーゼであるが、血糖調節作用はなく基質も両者で異なる。当研究室によって、DDP3は昇圧ホルモンのアンジオテンシンII(8アミノ酸からなるペプチド)を分解して降圧作用を発揮することや(Hypertension, 2016)、糖尿病血中に増加する組織障害性の補体分解物をさらに分解して糖尿病性腎臓病・心臓病を抑制すること(J Biol Chm. 2021)を明らかにした。

Rhoファミリー低分子量Gタンパク質については、RhoAコンディショナルノックアウトマウスを活用して、RhoAが腹部大動脈瘤の形成阻止に作用していること(Commun Biol. 2022)、また、心筋細胞老化を抑止して心機能の維持に貢献していること(J Biol Chem. 2023)などを突き止めた。さらに、動物生命科学研究センターとの共同研究で、世界初の家族性高コレステロール血症(FH)モデルカニクイザルの作製に成功した(Sci Rep. 2023)。そのほか、がんの浸潤・転移のメカニズムに関する研究(Oncogene. 2018; Cancer Res. 2021)、致死的不整脈が生じることのあるブルガダ症候群家系の全エクソーム解析をもとにした変異遺伝子機能解析研究(FASEB J. 2020)でも成果を上げることができた。これらの研究では、スタッフの努力はもとより、海外留学生(大学院生)の働きも大きい。現在、ベトナム(1名)、バングラデシュ(2名)、エチオピア(1名)、中国(1名)の計5名の海外留学生と、臨床診療科(泌尿器科、麻酔科)から2名の合わせて7名の大学院生が当研究室で研究に取り組んでいる。なお、海外留学生の1名は令和3年度学長賞を受賞して博士課程を修了することができた。また、複数の海外留学生が学会優秀発表賞、YIAを受賞するなど活発に研究活動を行っている。今後は上記の成果をさらに発展させ、トランスレーショナル研究を経て臨床応用すなわち疾患の治療に結びつけられるようにしていきたいと考えている。

最後に、最近10年間の当研究室の人事について述べる。准教授は上山久雄(昭和59年〜平成28年)が定年退職し、後任として佐藤朗(平成28年〜現在)が着任している。助教は栗田宗一(平成26〜27年)が退職・転職し、清水昭男(平成27年〜現在)がその後を継いでいる。特任助教として在籍していたDimitar P. Zankov(平成24〜31年)は、国立循環器病研究センター研究所の室長として異動した(カッコ内は在任期間)。当研究室は開講以来、基礎医学研究棟の2階中央エリアにあったが、研究棟の大改修後、令和4年秋より5階中央エリアに場所移動となった。(敬称略)

 

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