附属病院診療科
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開学50周年を迎え、呼吸器外科は多岐にわたる経験と成果を積んできた。1976年に初代教授である岡田慶夫元学長によって外科学第二講座の三分野の一つを担う胸部乳腺外科として開設された。その後、2002年に外科学講座呼吸器外科となり、今日に至る。この間、多くの呼吸器外科専門医・指導医を輩出し、現在、滋賀・京都の大学および中核病院を含む9施設の関連病院すべてに医長をはじめとする医員を派遣してきた。大学の責務は臨床・研究・教育の三位一体であり、それを達成するためには優れた人材を集め、育成することが不可欠である。地域の拠点病院として関連病院を有することは、豊富な症例の診療において地域医療に寄与するだけでなく、若手医師の修練の場を確保できることとなった。さらに、今年の9月の開催で第66回目の主催となる近江呼吸器疾患研究会では、先輩医師から新人医師まで一堂に会し、親睦を深めつつ学術的な向上と支援を行う場として確立してきた。
呼吸器外科学は、癌研究の世界的な進展と呼吸器外科手技・周術期管理が向上した1970年代が黎明期であり、我々は1984年に立ち上げられた呼吸器外科研究会が学会へ発展するのと歩みを共にしてきた。初期に肺癌の根治を目指し大開胸下での積極的な切除が主流であったが、時代の変遷とともに根治性・安全性だけでなく、低侵襲を追求する方向に舵が取られた。胸壁の負担減少を目的とした胸腔鏡を用いた鏡視下手術が台頭し、さらに、より創を少なくした単孔式手術、あるいは、小さい創でも高精度な手技を可能とするロボット支援下手術が広まった。また、呼吸機能を温存するために切除肺実質を少なくする肺区域切除術や気管支・肺血管形成術などが用いられるようになった。若手医師がこれら必要不可欠な手技を習得できる機会を逃さないように導入を行ってきた。新規の技術のみならず、開学以来、積み上げてきた2,000例を超える肺癌手術からの臨床経験、そして、縦隔腫瘍や嚢胞性肺疾患など他の胸部疾患に対する外科治療についても伝承できる環境づくりを重視してきた。
肺癌薬物療法の進歩は著しく、進行癌に対しては術前導入あるいは術後補助療法として手術との併用により手術成績の改善が試みられている。特に、免疫チェックポイント阻害薬の出現は、癌に対する免疫治療の新たな展開を迎えた。我々は1990年頃より腫瘍免疫学の基礎的研究から肺癌に対する活性化リンパ球移入療法・樹状細胞ワクチン療法を高度先進医療として導入し臨床応用してきた。腫瘍免疫学の進歩とも相まって、外科学教室にもかかわらず自前の研究室で腫瘍微小環境などの腫瘍免疫学の研究ができる環境も作り上げてきた。基礎研究のみならず、実臨床に還元できるような臨床研究も両立して取り組み、以後の医師人生に役立つ経験が得られる学位の取得を促してきた。
開学50周年を機に、大学と関連病院の連携を再確認し、診療・研究・教育の3本柱のバランスを保ちつつ、一層魅力ある診療科を目指し、歴史を積み重ねていく決意を新たにしている。ただし、外科医の減少や「医師の働き方改革」に伴う医師の能力低下が懸念される。これに対処すべく、新しい医療や最新の研究への挑戦を忘れず、高い技量や見識を持ちながら社会に奉仕できるよう、自己研鑽を怠らず、これを次世代にも伝えていくことが重要である。これからも常に前進し続けることで、医療の未来に貢献していきたいと思う。
SHIGA UNIVERSITY OF MEDICAL SCIENCE 50th Anniversary