Departments講座等紹介

附属病院診療科

母子診療科・女性診療科

講座開設より2年5ヶ月後の昭和53年10月1日に開院した滋賀医科大学医学部附属病院で、産婦人科は10月4日に2診体制で外来診療をスタートした。11日からは入院患者を受け入れ、開始早々分娩の第1号があり、中村恒男初代病院長が名付け親になり新聞報道されたという。婦人科手術の第1例目は子宮脱に対する腹式子宮全摘術であり、第5例目の子宮外妊娠破裂・プレショックの症例は、開院後に行われた時間外緊急手術の第1号であった。以来、初代吉田吉信教授のもとで県内に本院が浸透していく礎が築かれ、野田洋一第2代教授により県内の周産期医療体制の構築と生殖医学の普及が進められ、村上節第3代教授はこの流れを引き継ぎつつ発展を続けている。

各領域のepoch-makingを俯瞰すると、まず周産期医療においては、全国平均よりも高い滋賀県の妊産婦死亡率を背景に、平成6年外科・麻酔科・小児科・救急部・集中治療部とともに滋賀医科大学産科DIC救急班を組織し、とくに産科危機的出血に瀕する母体搬送の受け入れを開始、平成14年高度周産期医療チーム(消化器外科・心臓血管外科・麻酔科・小児科・救急部・集中治療部・内分泌腎臓内科・透析部・院外協力施設冨田クリニック)へと発展させ、母体救命に尽力した。さらに平成18年1月からは産科オープンシステムも採用し、ハイリスク妊娠の集約化を図り、重症妊産婦は滋賀医大へという流れのもと、平成25年4月より総合周産期母子医療センターに認定された。令和2年に始まったCOVID-19パンデミックでも滋賀県の最後の砦として機能した。現在では役割分担、病病連携、病診連携が進み、図のように本院の分娩件数は年々増加し、県内の母体死亡率は日本でもトップレベルに落ち着いている。

また、生殖領域では、平成8年より体外受精・胚移植を開始。3年後に二段階胚移植法という妊娠率を向上させる画期的な技術を編み出し、斯界をリードした。その翌年6月1日から不妊症看護認定看護師による不妊専門相談センターを開設。病院職員として胚培養士を採用し、開院より25年を経た病院の再開発計画に基づき平成21年11月23日新病棟のオープン時に併設した体外受精センターは、翌年1月から稼働を開始した。大学病院として高齢者や難治性の症例が集まる中、令和4年度の凍結胚盤胞移植あたりの妊娠率は42.4%、多胎率4.5%と高水準を維持している。また、平成27年7月7日に近畿圏のトップを切って、滋賀がん・生殖医療ネットワークを起ち上げ、がんや自己免疫性疾患などの患者さんの妊孕性温存外来(がん・妊孕外来)を設置し、卵巣凍結にもいち早く着手したこと及び妊孕性の低下など帝王切開後の後遺症の存在とその治療法を世に知らしめたことにより、近畿圏以外の地域からも紹介患者を集めている。

婦人科領域に関しては、病理学的診断に注力した時代を経て、若手を癌研有明病院、国立がんセンターや倉敷成人病センターなどの婦人科腫瘍や腹腔鏡下手術に関するハイボリュームセンターに派遣して人材を育成。腹腔鏡、子宮鏡、卵管鏡などの内視鏡手術を積極的に展開し、平成25年からはロボット支援下手術を開始した。現在では、良性疾患、悪性腫瘍手術に対応し、さらに骨盤臓器脱にも適応範囲を広げ、年間婦人科手術数はおよそ400件、その2割が悪性腫瘍、6割がロボット手術を含む内視鏡手術である。

また、多様化する診療ニーズに応えるため、遺伝相談外来、漢方外来、胎児超音波外来、子宮内膜症外来、助産師外来、NIPT(non-invasive prenatal genetic test)外来、NT(nuchal translucency)外来、妊娠と薬外来、HPV(human papillomavirus)ワクチン外来、思春期・女性アスリート外来、がん・妊孕外来、帝王切開瘢痕症候群外来など特殊外来を順次開設した。病院3階の外来は、再開発により平成22年に問診室を6診に増設したが、いまも手狭であり、長年の課題である不妊不育の症例と妊婦を分離するために、今後現在の場所に加えて4階に外来スペースを拡張することが計画されている。

一方、病棟は、開院当初産科病棟(分娩部)は手術室に近い現3B病棟に、婦人科病棟は混合病棟として現6A病棟に設置されていたが、看護部人員配置の事情から、病院全館完成後の昭和57年2月に、6A病棟に婦人科の病床を削って統合された。以来、平成18年10月1日より産婦人科は母子診療科と女性診療科の2診療科体制に改変されたが、再開発による病棟改修後も一体となって運営され、6A病棟には母子・女性診療科としてLDR1床を含む42床のほか、陣痛室3床、分娩室2床(LDRを除く)を備え、また南側の一角にMFICU(母体・胎児特定集中治療室)6床を有している。

以上、滋賀県における本院の役割は増大しており、症例の増加、診療の拡大を背景に、令和6年度からの医師の働き方改革を契機として、従来の宿日直体制から夜勤体制に移行して対応する予定である。

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