附属病院診療科
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附属病院診療科
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ペインクリニックの診療は、開学以来、麻酔科術前外来の傍らで疼痛外来(ペインクリニック)という形で行っていた。ペインクリニック科は、周術期における高度な麻酔科診療が必要とされる背景と同時に、より専門性の高い疼痛治療を行うことを目的に、2007年6月、麻酔科から分離して、ペインクリニック科が設立された。
主な対象疾患として、
椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、変形性脊椎症、肩関節周囲炎など
帯状疱疹痛(急性期から)、帯状疱疹後神経痛、遷延性術後痛、CRPS(複合性局所疼痛症候群)など
閉塞性動脈硬化症など血流障害にともなう下肢痛など
内臓痛、脊椎転移による腰背部痛
の診療を行っている。
また、ペインクリニック科では、以下の特色ある医療を行ってきた。
2007年以降、X線透視下の神経ブロック療法を、年間1,000件以上施行している。加えて、超音波を併用した神経ブロック療法も積極的に行っている。
神経根や末梢神経に対するパルス高周波法(P-RF)は、局所麻酔薬による治療効果がある場合に、より持続的な効果が期待できる安全かつ副作用の少ない新しい治療法として普及しており、当科においても、椎間板性腰痛に対する椎間板内療法、肩関節周囲炎に対する肩甲上神経ブロック、仙腸関節障害に対する仙腸関節ブロック、膝関節痛におけるgenicular nerveに対するパルス高周波法を用いた治療を広く応用している。脊椎手術後に組織の癒着などが原因となって生じる難治性の疼痛に対するラッツカテーテルによる治療の臨床研究を行い、薬事許可を経て2014年度から保険診療を可能にした。
厚生労働省の「慢性の痛み対策研究事業」の指定研究に基づいて、全国の拠点大学病院33施設の一施設として参加し、診療科を横断した学際的な痛みセンターを構築する活動を行ってきた。難治性の慢性痛に対して、学際的カンファレンスを行い慢性痛患者の問診票、評価方法を全国で統一化する多施設共同研究を行っている。2013年から厚生労働省からの要望を基に院内措置として、「学際的痛み治療センター」が設置された。
緩和ケアにおける癌性疼痛の治療は、非常勤講師を中心に各病棟主治医と密接な連絡のもと、緩和ケアチームと連携してオピオイド鎮痛薬や鎮痛補助薬の使用法、副作用対策、高度な神経ブロック療法などを行って、痛みに苦しむことのない病院作りを目指している。
MR SpectroscopyやVoxel-based Morphometryなどさまざまな脳機能画像法を用いて、慢性疼痛の脳内機序を明らかにしてきた。国際疼痛学会をはじめとして国内外の学会で研究成果を発表し、論文発表を行っている。また、多施設で共同研究を行い、さらなる発展を目指している。日本ペインクリニック学会では、「神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン」の作成に携わってきた。本邦の疼痛関連連合学会で共同作成を行った「慢性疼痛診療ガイドライン」にも携わってきた。学生のみならず、特定看護師に対して周術期における疼痛管理の教育を行い、術後疼痛管理チームと協力し、周術期の臨床現場においても積極的に関与している。また、インターベンショナル治療の研修を希望する医師を積極的に受け入れ、ペインクリニックの開業医師を輩出してきた。
今後、病態生理学に基づいた診断に加え、心理・社会的因子による修飾因子を把握して適切な診断を行い、薬物療法、インターベンショナル治療、認知療法、運動療法をバランス良く組み合わせた診療を進めていき、50年後の検証を仰ぎたい。
SHIGA UNIVERSITY OF MEDICAL SCIENCE 50th Anniversary