Chapter.05 滋賀医大版「三方よし」の環境整備
- 吉川
- まもなく50周年を迎えますが、計画されていることなどはありますか。
- 上本
- 記念事業として、現在レンガ貼りになっている中庭を学生や教職員が集える場所として芝生化しようと計画しています。可能であれば患者さんや県民の皆様にも来ていただける場所にしたい。近江商人が言う「三方よし」ですね。学生・教職員よし、卒業生よし、県民・地域よしで、人々をやさしく迎える場所づくりを考えています。
また、手狭になっている学生食堂をリニューアルしようと思っています。改修してゆったりと昼食がとれるようになれば、教職員も参加したディスカッションの場にもできます。
- 50周年記念事業では、これまでの50年に感謝し、これから飛躍することをコンセプトにしています。本学の理念である「地域に支えられ、地域に貢献し、世界に羽ばたく大学」という言葉の通り、私たちには滋賀県民の命と健康を守ることが一番重要なミッションです。それに取り組む姿を見せたいと思っています。
- 吉川
- 私は今、県の仕事にも携わらせていただいていますが、滋賀県内で医師や看護師として働く滋賀医科大学の卒業生は非常に評判がいいですね。それを見ても地域に貢献する人材は育成できていると感じます。
記念事業の詳細については、こちらをご覧ください。(完成イメージは、計画段階でのイメージであるため、今後変更になる可能性があります。)
- 上本
- 地域医療に貢献する人材育成のためには、やはり滋賀医科大学への「帰属意識(愛着)」をもってもらうことも大切です。それを涵養(かんよう)するためにも、学びの環境を整えることは重要だと考えています。
- また、平成30(2018)年から始まった新専門医制度によって専攻医(※)の育成が始まっていますが、この5年間を見ると、本学の専攻医数はぐっと増えています。平均すると年60人近くなっており、来年度はもっと増えそうです。
- 吉川
- それは他学の卒業生も含まれているのですか?
- 上本
- そうです。これはまさに本学が取り組んできた教育の賜物です。優秀な仲間が集まってくれるということは、今後の滋賀県の医療発展に重要なだけでなく、本学を飛び立って、その先でさらに続いていく研究、また世界各地での研究の底上げにも非常に重要なことです。
- 私は学長として最優先の仕事は、専攻医の数を増やすことだと思ってきました。これまで長年にわたって本学で取り組んでこられたことが実を結びそうな予感がするところへ、私が学長にならせていただいたことに感謝しているところです(笑)
- 吉川
- やりがいをもって来ていただいたことに、我々も大いに期待をしております。
※専攻医…
2018年度から始まった新専門医制度として新たに登場した研修医の名称の一つ。2年間の初期研修を終えたあとに、専門医取得を目指して各病院の専門研修プログラムで学ぶ医師を指す。
専門研修プログラム 説明会
Chapter.06 サステナブルでアトラクティブな大学へ
- 上本
- 国立大学法人化のときは、私はまだまだ駆け出しでしたが、当時に起きた波は今もずっと続いており、大学としては厳しい状況が続くと思っています。
しかし、悪いことばかりではなく、今後のデジタル化など、いいところは上手く取り入れていきたいと思っています。
- 吉川
- 論語に「五十にして天命を知る」とあるように、開学50周年を迎え、滋賀医科大学に与えられた天命が何なのかということを、ぜひ学長をはじめ職員のみなさんで考えていただければと思います。
大学を正しい方向に導いていただきたいと期待しております。
- 上本
- いま私は「サステナブルで、アトラクティブな滋賀医科大学」というメッセージを掲げて事業に取り組んでいます。サステナブル(持続性)にはやはりお金が必要です。
ただ、財政面はこれまでのみなさんのご努力もあって安定しており、その環境が安心して学び、働ける環境を生んでいると感じます。
- その上でアトラクティブ、楽しむことを大切に考えたい。
みなさんが前向きになって働ける環境をつくるためには、やはり風通しが重要です。学長という立場でできるだけ説明責任を果たし、「なぜそう決めたのか?」 ということを理解していただけるようにしていきたいと思っています。
トップダウンだけではなく、ボトムアップとのバランスを取らなくては、本当の意味でみなさんにとってやりがいのある職場にならないんじゃないかと考えています。
- 吉川
- 教授の先生方はそれぞれ優秀な経歴を評価されて採用されていますが、さらにその中から何人かのスターが出てきてくれたらいいなと思います。
滋賀県だけ、日本だけでなく、世界から「滋賀医科大学にはあの人がいる」と言われる人材が現れ、大きく飛躍し、発展していってほしいですね。
- 上本先生が提唱されるアトラクティブな大学の気風の中から、スターになる人材が次々に生まれてきてくれたらと期待しております。
- 上本
- 本日は開学のころの様子から、法人化を乗り越えたご苦労と、さまざまな改革についてお聞かせいただき、本学の進むべき方向について改めて考える機会となりました。
- 吉川先生、誠にありがとうございました。
吉川 隆一 KIKKAWA Ryuichi
昭和38(1963)年大阪大学医学部医学科卒業。同大学第一内科入局後、昭和46(1971)年米国ケース・ウェスタン・リザーブ大学内科フェロー、昭和48(1973)年スイス国ベルン大学内科フェローを経て昭和50(1975)年大阪大学医学部助手。昭和54(1979)年より滋賀医科大学第三内科講師、昭和62(1987)年同大学第三内科助教授、平成7(1995)年同大学第三内科教授を経て、平成13(2001)年に本学第5代学長に就任(平成20(2008)年3月31日まで)、同年4月に本学名誉教授となる。昭和55(1980)年ベルツ賞、平成13(2001)年日本糖尿病合併症学会賞、平成16(2004)年日本腎臓財団学術賞、平成19(2007)年日本糖尿病学会坂口賞を受賞。日本糖尿病学会理事、日本腎臓学会理事及び会長、日本糖尿病合併症学会会長を歴任した。現在は公益財団法人滋賀医学国際協力会理事長、滋賀県健康医療福祉部参与。専門分野は内科学(糖尿病学、内分泌代謝学、腎臓病学)。