【卒業生×在学生 座談会】地域医療は滋賀から変わる、若者が変える。
卒業生×在学生 座談会 地域医療は滋賀から変わる、若者が変える。

地域医療の拡充が求められるいま、滋賀医科大学では「滋賀県における次世代のリーダー育成」を掲げ、地域医療に重点を置いた教育を進めています。
卒業後すぐに地域の現場で活躍できる人材の育成をめざして実践的なカリキュラムを導入しており、ほかにない先進的な取り組みとして大きな期待を集めています。

今回は滋賀県において地域医療に従事されている卒業生に参加いただき、在学生とともにこれからの地域医療についてそれぞれの思いや希望を語っていただきました。

松井善典さん

医学科25期生(2005年卒)
浅井東診療所 所長

渡邊莉希さん

看護学科23期生(2020年卒)
訪問看護ステーションさと水口
看護師

吾妻愛子さん

医学科2年生
地域医療重点コース※1在籍

細見優華さん

看護学科4年生
地域医療実践力育成コース※2在籍

※2023年5月時点

  • ※1.【地域医療重点コース】…本学医学科が設ける「地域枠」制度を利用し入学した学生が在籍するコース。地域医療に強く関心を持ち、将来の滋賀県の地域医療をけん引する学生が在籍しており、滋賀県の医療を理解するための様々なプログラムを受講可能。
  • ※2.【地域医療実践力育成コース】…2015年度に新卒の訪問看護師育成を目的とし、滋賀県から委託を受け設置されたコース。在宅看護技術のシミュレーション演習や地域医療の実習を少人数で学ぶことが可能。

なぜ地域医療をめざすのか
なぜ地域医療をめざすのか

吾妻

医師になりたいと考えるようになったのは、医療関係者として働く父や母から患者さんに感謝された話を聞いて育ったことが大きいように思います。 人の笑顔が好きで、人の役に立ちたいという思いが中学、高校と進んでいくうちに強くなり、それとあわせて、自然の多いところに住みたいという思いがあって。

吾妻

都市部の大きな病院もやりがいはあると思いますが、一人の患者さんと向き合う時間が短くなるのではという懸念もあり、自然豊かな地方の病院で働いてみたいと考えるようになったのが地域医療をめざす最初のきっかけでした。

細見

私が看護師になりたいと思ったのは…恥ずかしいのですがドラマの影響です。

渡邊

僕もドラマ(笑)。
そういう人は多いと思いますよ。

細見

滋賀医大の看護学科に入学して、2年の後期から在宅看護の授業が始まり、そこで見たプロフェッショナルな看護に強くひかれたのが地域医療をめざすきっかけになりました。

訪問看護では医療と看護の中心に療養者さんがいて、そのなかで生活が成り立っています。
文字通り療養者さんの「ホーム」にうかがって提供する看護というのが、すごくいいなと感じました。

松井

病院での医療が患者さんにとって「アウェイ」とまでは言いませんが、患者さんのお宅には「おじゃまします」といって遠慮がちに入るのに、病院のカーテンは「失礼します」といいつつガラッ!と開けますもんね(笑)。

松井

病院ではどうしても医療・看護の都合が優先になりがちです。
在宅医療では、壁に飾ってある写真を見ながら「これはお孫さんですか?」などお話をしつつ、リラックスしてもらいながらその方の生活に入っていくことができます。

吾妻

地域医療重点コースでは、カリキュラム内や課外授業を含めて、現場での実習や現場の先生のお話を聞く機会がたびたび設けられています。
学びを進めていけばいくほど、私が思い描いていた“一人一人の患者さんにしっかり寄り添う”というかたちが地域医療にはあると感じます。

地域医療の現場に「若手はいない」という先入観
地域医療の現場に「若手はいない」という先入観

松井

私はもともと小児科志望でした。子どもの診察だけでなく、お母さんの育児相談にのったり、おばあちゃんの膝の痛みも診られる小児科医というキャリアをイメージしていました。
その後に出合ったのが当時できたばかりだった家庭医療学講座でした(現:総合診療学講座)。

松井

講座の先生の紹介で診療所の外来を見学に行ったとき、さまざまな患者さんの訴えにまさに「神」のように応える臨床能力の高い若い先生に会ったんです。 聞けば医師5年目で、北海道で地域医療のトレーニングを受けられた方でした。

早速、診療所で出会った恩師に推薦文を書いていただき北海道に向かい、礼文島や十勝で7年間研修し、「これならどの地域でもやっていける」と思えるようになったところで地元の湖北に戻ってきました。

渡邊

僕は新卒で訪問看護師になった「超レアケース」で、看護学科の創設以来、初だそうです。
高校生のときに「一日医療体験」というイベントで訪問看護の現場を見学して以来、この道に進みたいと思っていたのですが、大学に入ってみれば、オペ担当や救急などいろんな領域があってそちらも気になっていました。

渡邊

しかも地域医療の分野では、過去に「現場経験が5年以上必要」とされていた時期があったことで、キャリアのある人が就くというイメージが根強く、学生が学ぶための実践的な専門カリキュラムもありませんでした。

滋賀医大に地域医療実践力育成コースが新設されたのはそんな矢先のことで、道が拓けました。

松井

医師の場合も同じです。
病院で訓練を受けた人が地域医療にいくというキャリアモデルが長年続いてきたため、現場は50~60代の医師がほとんどです。
ただ、病院で20年働いたからといって、地域医療の現場で上手くいくかといえば別の話。

最近それがやっと認められるようになり、私や渡邊さんのようなキャリア形成も可能になってきました。

渡邊

僕は幸い家族も賛成してくれましたが、大学を出たらまず大きな病院に勤めるというイメージをもつ親世代も多く、反対されるケースもあると思います。
そういった地域医療への先入観を払拭していかなくてはいけませんね。

大切なのは実践ある学びと連携ある現場
大切なのは実践ある学びと連携ある現場

吾妻

コロナ禍で実習が制限されたこともありましたが、そんななかでも行政との連携を学ぶ機会がありました。

時期が時期だけに保健所などは直接見学できませんでしたが、どんな情報がどこで管理され、地域医療の現場とどう繋がって、医療はどんな方々に支えられているかを1~2年生の段階で知ることができたのは大きな収穫でした。

細見

看護学科の地域医療実践力育成コースでは、日本家屋を模した学外施設で実習する機会があります。

学生同士でシミュレーションするのではなく、第三者に療養者さん役をしていただいて特殊な環境下で看護をするほか、附属病院の患者支援センターでは、退院支援について二週間にわたって学ぶ機会もあり、在宅看護を主眼に置いた実践に早くから取り組めるのはありがたいです。

松井

滋賀医大は規模が小さい分アットホームな雰囲気で、学生時代は“大学を旅しよう!”といろんな研究室に出入りし、部活や学園祭にも積極的に関わってきました。
つまり滋賀医大大好き芸人なんです(笑)その甲斐あって学生時代の人脈を生かし、いまもたくさんの人に応援していただいています。

松井

若い人が地域医療に関わりたいと思うとき「それはあとでいい」「まずは専門的に学べ」という人もまだまだいます。しかし滋賀には地域医療の「専門性」を重視する先生方がたくさんいて、いま私はその学会の世話役をしています。

地域の診療所の医療は遅れていると考える人もありますが、日々研鑽を積んで交流や勉強を重ねるなかで、最新の技術に取り組んでいる先生もいます。

渡邊

地域医療に若い人がもっと携わっていけるよう、発想の転換が必要です。

そこでいま県内の20~30代の看護師を中心に若手が集まる会を結成し、リーダーを務めています。 20人のメンバーのうち、いまは病院で働く人が大半ですが、いつかは在宅看護に就けるよう、そして新卒から働けるようにしたいという思いで連携し、若手の力で盛り上げていきたいと活動しています。

いま滋賀医大に望む地域への情報発信力
いま滋賀医大に望む地域への情報発信力

吾妻

先日、松井先生の診療所で患者さんとお話をさせていただく機会がありましたが、大学病院の患者さんとは病気に対する向き合い方が違うんです。病気の根治ではなく、病気とともに暮らすという生き方に触れることができ、参加した人はみんな行って良かったと言っていました。 こういう機会をぜひもっと増やしていただければと思います。

国家試験に受かったら、大きな病院で研修して次の病院へ、というステレオタイプのイメージをなくし、地域医療という道もあることを、大学からもっと大きく発信してほしい。 道があることは知っているけれど、そこで何ができ、何が得られるのかまで具体的な提示があればいいと思います。

細見

訪問看護を学んでいる滋賀医大の学生でさえ、新卒で地域医療の現場は無理だとネガティブなイメージをもっている人が大半です。
私がこのコースに進むと話したら、友人のなかには「すぐ現場に就けないのに行く意味はあるの?」という人もいました。

意識を変えていくためには早い段階での教育カリキュラムが必要ですし、場合によっては高校と連携して地域医療について知ってもらう機会を設けるのもいいかもしれません。 滋賀医大からぜひ地域に呼び掛けてほしいと思います。

渡邊

これは野望といってもいいものかもしれませんが(笑)、いずれ滋賀医大で訪問看護ステーションを立ち上げてほしいと思っています。

重症度が高い患者さんが多いからこそ、自宅に帰りたい人も多いはずで、地域の診療所にはないさまざまなケースへの対応を考えていく契機にもなると思います。 学生に対しても絶好の実習の場になるんじゃないでしょうか。

松井

学生に教える機会もいただき、教壇に立つ診療所の医師というのは私の一つの理想のかたちではありますが、もっとロールモデルを増やさなくてはなりません。滋賀には良いモデルとなってくださる先生がたくさんいらっしゃいますが、残念ながら大学と繋がっていない。
そういった教育のリソースを地域と大学が協力して学びに繋げ、医学生たちの教育インフラを整えていくことが大切です。

そうすれば滋賀医科大学の存在意義は地域のなかで大きくなり、次の100年につながっていくのではないでしょうか。

地域医療は滋賀から変わる、若者が変える。
地域医療は滋賀から変わる、若者が変える。