Cross Talk 開学50周年記念対談
滋賀医科大学の「過去×現在×未来」

#03

大学・学生・地域が 「三方よし」でともに 発展していく仕組みづくりを 

地域医療教育研究拠点病院 院長座談会

後編 地域における教育・研究の拠点として

2023/11/21 release

独立行政法人国立病院機構 東近江総合医療センター院長

野﨑 和彦 NOZAKI Kazuhiko

1983年京都大学医学部卒業。米マサチューセッツ総合病院脳神経外科、京都大学医学部脳神経外科准教授などを経て、2008年滋賀医科大学脳神経外科学講座教授。2023年4月より現職。

独立行政法人地域医療機能推進機構 JCHO滋賀病院院長

来見 良誠 KURUMI Yoshimasa

1981年滋賀医科大学医学部卒業。米ピッツバーグ大学、滋賀医科大学外科学講座准教授を経て、2011年同大学総合外科学講座教授。2015年4月より現職。2019年4月から2020年10月まで滋賀医科大学理事(地域医療担当)を兼務。

地方独立行政法人 公立甲賀病院院長

辻川 知之 TSUJIKAWA Tomoyuki

1986年滋賀医科大学医学部卒業。米テキサス大学、滋賀医科大学消化器内科講師を経て、2011年同大学総合内科学講座教授。2020年4月より現職。2020年11月から滋賀医科大学理事(地域医療担当)を兼務。

滋賀医科大学では、県内の3つの病院内に「地域医療教育研究拠点」を設置しています。これは地域における医療活動を通して、地域医療を担う医師の養成と確保に関する研究を行うと同時に、地域医療を組織的に確立することを目的としており、医学科学生の臨床実習を中心に連携を行っています。今回はその拠点病院となっている3病院の院長にお集まりいただき、意見交換とこれからの展望について語っていただきました。

Chapter.01
地域における教育・研究の拠点として

 

来見
滋賀医大の地域医療教育拠点は2017年にNHO東近江総合医療センターから始まり、翌年にJCHO滋賀病院、2020年に公立甲賀病院で設置されました。
現在3つの拠点があり、東近江では副院長として仕組みづくりに携わり、滋賀病院に移ってからは成果を出すことにも注力してきました。また公立甲賀病院での拠点設置には大学の理事として関わっています。

 

とくに現職の滋賀病院はJCHOという全国組織に属していることもあり、各地で地域医療に悩んでおられるお話に接する機会があり、それぞれの規模、それぞれの地域にあわせて仕組みづくりが求められていることがよくわかります。
滋賀で起こっていることは全国でも起こっており、そこからやるべきことも見えてきます。ひと言でいうなら「やりたい医療を提供するのではなく、求められる医療を提供する」ということが必要なのだと感じています。

 

 

画像:NHO東近江医療センター/JCHO滋賀病院/公立甲賀病院

 

 

 

野崎
東近江総合医療センターでは、来見先生、辻川先生のお二方が関わってつくられた仕組みがいまも継続しており、教育という観点で非常に優れたシステムだと感じています。とくに毎朝のカンファレンスでは、患者さんの所見と検査を診て院内の専門医の先生と相談し、診療科を決めていくまでの流れを学生や初期研修医も見学します。

 

これは地域医療においてコモンディジーズに隠されているアンコモンディジーズも含め、いち早く地域に必要な医療を提供できる体制ではないかと思います。教育研究拠点としては、院内だけではなく院外での教育の必要性も感じており、行政等とすり合わせながら院外の医療機関や医師会と情報共有することが必要です。

 

また、研究という点においてはまだ不十分なところがあり、現状では「教育の研究」はできても「医療の研究」は時間的制約もあって難しく、滋賀医大と連携しながら真の意味での教育研究拠点をつくっていかなくてはいけないと考えています。また、小さな取り組みとしては今年から院内で論文の表彰制度を始める予定です。

辻川
公立甲賀病院では私が赴任するまで学生を受け入れていなかったこともあり、当初は先生方の間に不安もあったようでした。しかし蓋を開けてみると、どの先生も非常に教育熱心で、当院でしかできないような医学教育を行おうという指針のもと、内容はそれぞれの診療科におまかせしています。

 

滋賀医大と連携を強くしていることは、当院の医師に安心感を生んでおり、とくに若い先生にとってメリットが大きいと感じます。野﨑先生のご尽力で脳神経外科の診療や循環器内科の心臓カテーテルといった医療が非常に短期間で充実できたのも拠点病院だからこそです。

 

大学と連携を強め、人材の交流に努めることで若い先生や学生の人気を高めることができ、またそこに注力することは地域医療を支えるにあたって重要ではないかと感じています。

 

 

 

 

 

 

Chapter.02
滋賀医大に望むこと期待すること

 

 

来見
野﨑先生のお話にあったように、総合診療カンファレンスは、謎解きのように診断していく過程が学生や研修医から非常に好評で、そのなかで地域医療に求められる総合力が自然に身に付いていると感じます。

 

自由参加としていますが、これは内容が充実していれば参加率も高くなるということでもあり、ある程度の成果を達成していると感じています。また、こういった仕組みを続けていくためには大学の協力が必要で、大学でも同じように学生や研修医などの実習をしていただけると継続した成果が得られ、またそこから病院として大学に貢献できます。
この循環を維持するために大学としても拠点での取り組みを続けていただきたいと思っています。

野崎
今後は医師に限らず、医療職全般を対象に教育研究拠点としての活動を進めていただき、最終的には訪問看護制度、在宅医療にまで踏み込み、滋賀医大が地域医療を支えるという方向性を打ち出していただきたいと思います。
3病院が教育研究拠点であることは地域にまだ知られていないこともあり、大学からもっとメッセージを発信していただくことで、各拠点が活性化することを望んでいます。

 

また、医師として専門性を磨いたあと、地域に戻りたいという方をリクルートし、地域医療に必要な知識とあわせてリカレント教育することも大切な取り組みです。学生や初期研修医だけでなく、もっと長い目で生涯にわたる教育研究の拠点になれればと考えています。 大学に対しても、そういったビジョンをもって構想を計画していただければと思います。

辻川
当院では訪問看護も行っており、大学から年間1人が実習に来られていますが、野﨑先生がおっしゃったように、さまざまな医療従事者、とくに看護師の教育研究をさらに充実させてほしいと思います。
地域でしかトレーニングできないことに取り組み、大学へ帰ってキャリアアップへつなげていただける仕組みを作れば、モチベーションにつながるのではないでしょうか。もちろん地域住民の方としても、大学で最先端の知識を身につけた方に来ていただけることは大きなメリットです。
ぜひ医療にかかわるあらゆる職業の方の拠点にして、さまざまな人材交流に発展させていってほしいと望んでいます。

 

また、現在私は地域医療担当として滋賀医大の理事を務めさせていただいています。
現在3つの拠点のほか、とくにいまは県北部での拠点づくりも視野に入れており、広い意味で準拠点に当たるような存在を増やし、滋賀医大の地域医療を充実させていくことを学長も掲げておられます。滋賀医大の学びの取り組みから地域を照らし、医療を支える人材の育成につなげていければと考えています。

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