新型コロナウイルス感染症が拡大し、複数回の波となって地域社会に急速に広がりました。滋賀医科大学は滋賀県や他の医療機関と連携して、大学全体で新しい感染症に対応しました。専門スタッフを派遣し、専門の診療チームを結成し、ワクチン接種事業を推進し、着実に成果をあげてきました。ここに記すのは、刻々と変化する状況の中で、「走りながら考える」ことを実践してきた記録です。

　新しい感染症との戦いは、短期間のうちに私たちの生活を一変させました。考えてみると、変異ウイルスや自然災害など、健康や安全を脅かすものは新型コロナウイルスだけではありません。感染拡大を防ぐために導入した取り組みやルールが十分な効果を挙げたのかどうか、検証してさらに有効な対策となるよう改善し続けることが、これからの課題といえます。

専門スタッフの派遣

滋賀県新型コロナウイルス感染症対策協議会に病院長と感染制御部長が参加

2020年4月に設置された滋賀県新型コロナウイルス感染症対策協議会で、感染症対策にかかる施策について助言しました。

クラスター発生施設等への専門スタッフの派遣

厚生労働省からの委託を受け、日本環境感染学会が実施する「感染制御支援チーム（ICT）派遣事業」において、当院感染制御部長が滋賀県のチームリーダーとなり、県内の患者クラスターが発生した施設等へ、インフェクション・コントロール・ドクター（ICD）の資格を有する専門医1名とインフェクション・コントロール・ナース（ICN）の資格を有する看護師14名（延べ人数）を派遣し、治療に関する助言やゾーニングの指導などを実施しました。

DMAT（災害派遣医療チーム）の派遣

DMATとは、医師・看護師・業務調整員等で構成され、大規模災害や事故などの際に現場に急行する医療チームです。滋賀医科大学では複数のチームを有しており、新型コロナウイルス感染症対策でも活動しました。
滋賀県に設置されたCOVID-19災害コントロールセンターでは、県内の新型コロナウイルス感染患者の入院調整や搬送調整業務に従事しました。患者クラスターが発生した施設にもDMATを派遣し、濃厚接触者からの検体採取や宿泊療養施設への入所調整を行い、クラスターの早期収束に貢献しました。
また、滋賀県が設置した「滋賀県見守り観察ステーション」にもDMATを派遣し、運営を支援しました。

大阪府および兵庫県への看護師派遣

感染拡大のために医療体制がひっ迫した大阪府および兵庫県に対して、2020年12月から2021年6月までの期間に看護師4名を派遣しました。

ワクチン接種事業にスタッフを派遣して協力

大津市の集団接種事業には、医師577名、看護師685名、薬剤師68名（いずれも延べ人数）を派遣しました。
※2021年12月1日時点

大規模接種会場へのスタッフ派遣

滋賀県からの要請で、地域の医療従事者約1,000名を対象に集団接種を実施しました。
滋賀県広域ワクチン接種センターへ医師578名（延べ人数）を派遣しました。
大津市の集団接種事業には、医師577名、看護師685名、薬剤師68名（いずれも延べ人数）を派遣しました。

滋賀大学へのスタッフ派遣

滋賀大学の大学拠点接種（職域接種）に、医師6名を派遣し、滋賀大学の学生と教職員約1,500名への接種を支援しました。

患者およびPCR検査の受け入れ

他医療機関・他府県からの新型コロナウイルス感染症患者の受け入れ

滋賀県COVID-19災害コントロールセンターと緊密に連携し、重症患者を中心に他施設からの転院受入要請に対応しました。
本学附属病院で受け入れた患者の9割以上が、他施設からの転院でした。これらの重症患者に対応するため、新型コロナウイルス感染症に対応できる病棟（最大25床）を設置しました。特に、本学附属病院は妊婦・小児のハイリスク患者の受入フローの県内最後の砦となっています。
また、患者さんは県内からだけでなく、医療のひっ迫が深刻となった大阪府から、重症患者1名を受け入れました。

PCR検査の受け入れ

滋賀県からの要請に応えて、2021年10月までに2,000件以上のPCR検査を実施しました。