医療情報部（2001年4月1日設置）

本学は国内でもかなり早期からコンピュータの臨床・医学研究・医学教育への利用に取り組み、1987年に医学情報センターを立ち上げた。医学情報センターは、医療情報部門と実験実習計算機部門を両輪として、滋賀医科大学のICT化のべースとなった。そのうち医療情報部門が現在の医療情報部へと発展した。

当院では、それまでのホストコンピュータとダム端末で構成されていた初期の医療情報システムから、パソコンをユーザー端末として利用する新しいホストパソコン連携型医療情報システム開発の先駆け大学の一つとしてシステムの研究・開発を行い、それを実際に病院で使用する形で改良を重ねてきた歴史がある。1987年には第1期病院情報システムとしてオーダリングシステムSHiNE（シャイン）を導入した。5年後には第2期へのシステム更新を行い、当時は一般化していなかったインターネット接続を開始した。第3期のSYNAPS（シナプス）では1998年から高速院内LANとクライアントサーバー型システムをいち早く開発し導入した。

この頃、国の施策としてすべての国立大学医学部附属病院に医療情報を専門に扱う部門の設置が求められるようになったことで、2001年、それまでの医学情報センター医療情報部門を移行する形で、当院にも医療情報部が置かれることとなった。

その後、オーダーリングシステムとしては最後の第4期となるSYNAPS II（シナプスツー）を経て、2010年からは通算では第5期となる病院情報システム、すなわち第1期の電子カルテNiho（ニオ）をスタートさせた。2015年には第2期の電子カルテNiho2（ニオツー）となり、2018年のバージョンアップを経て、2021年には第3期の電子カルテNiho3（ニオスリー）となった。

2018年には、大学における情報を扱うマルチメディアセンターと、附属病院における情報を扱う医療情報部を包括する枠組として情報総合センターが設置され、マルチメディアセンターとのシームレスな連携が図られることとなった。

2024年現在は、2027年からの第4期の電子カルテに向けて準備を進めている。加えて、2024年には病院機能強化を図る新棟（E棟）のⅠ工区がすでに竣工しており、2026年にはⅡ工区が竣工する予定で、それらに付随して従来の院内の機能強化改修が予定されているなかで、医療情報部はまさに同時並行で、電子カルテを含む病院情報システムの導入・拡充整備を行っている。

医療情報部は、院内の診療に関わるすべての「医療情報」を専門的に扱う診療・教育・研究支援部門であるが、単に診療録（カルテ）を紙から電子に移行させたというだけでなく、さまざまな検査機器、薬剤処方システム、看護支援システム等と院内ネットワークで連携させた「病院情報システム」を構成している。病院情報システムには、診療にかかる患者の個人情報を確実に守りながら、医療現場で毎日のように生まれる膨大な診療データを日々の診療・治療・看護等に役立てられるように、24時間365日休みなしで安定稼働することが求められているが、医療情報部では、まさにそうした病院の心臓部分を支えてきた。

当院における医療情報部の特徴としては、医師・看護師・薬剤師・臨床検査技師等の多職種で構成され、医療情報係（1987年、院内コンピュータ・情報関係の実務を担う事務官による組織として発足し、医務課→病院管理課→クオリティマネジメント課と再編される中で発展してきた）の卓越した技術系・事務系職員との協力体制を築き、発展してきたことが挙げられる。また、医療従事者が診療に専念できる環境を実現するため、医療情報部連絡協議会等を通じて、各診療部門とも密に連携するようにした。さらに、医療情報部の医師は自ら日常の診療も行い、医療情報を扱うことで、医療現場における様々な気付きを柔軟にシステムに取り入れ、不具合があればいち早く察知して対策できるようにしている。こうした当部署の方針により、診療を受ける患者に対してのみならず診療を提供する医療従事者の双方に対してやさしい病院情報システムを提供できるように心掛けている。

医療情報部は、今後も情報の質的管理を含め、病院における医療情報処理・医療情報管理・地域連携・研究情報や病院運営のための情報提供等を行い、医学部附属病院を含む滋賀医科大学全体のICTを支える重要な役割を担う部門として、医療情報のあり方と社会的ニーズの変遷に合わせ変化し続けることになるであろう。なお、医療情報部の部長・教授（就任年）は、初代の永田（2002）を引き継ぐ形で、現在は、第2代を情報総合センター教授の芦原（2019）が兼任している。詳しくは医療情報部のホームページ（https://www.shiga-med.ac.jp/hospital/doc/department/clinic_education_research/medical_info/staff.html）をご覧いただきたい。